歌ってみたのMIX方法の記事を書こうと思います。
今回は基礎知識ということでダイナミクスの調整について記事を書こうと思います。具体的な3つの方法も紹介しますのでこれからMIXを始めようという方、既に始められている方もぜひ参考にしてみてください。
安定感のあるベースのRECと ダイナミクスの処理方法 (3)

ダイナミクスとは

コンプ前
ボーカルの声はRECした状態のままだと音量にバラつきがあります。歌声の大きさが大きくなったり小さくなったり、この音量差がある状態をダイナミクスがあると言います。
ボーカルの表現であえてダイナミクスをつけている場合もありますが基本的にはこの音量のバラツキを心地良く聴ける程度に均一化してやる必要があります。
音量上げ後のコピー
そうすることでCDやサブスクで聴くような心地良いボーカルの音量感になります。

1.ダイナミクスを埋める方法:コンプレッサーを使う

ダイナミクスを埋める方法をいくつか紹介します。まず一つ目はコンプレッサーを使用する方法です。
コンプレッサーはスレッショルドという音量の基準値を決めて、スレッショルドを超えた分を圧縮して再度音量を増幅させることで音量の均一化を行うエフェクトです。
コンプ後
↑スレッショルドを基準に超えた分は圧縮されている。このままでは音量は全体的に下がったままになる。
音量上げ後
圧縮した分をさらに音量を上げることで均一化され、さらに全体の音量も元に戻りました。コンプレッサーでダイナミクスを埋める原理はこのような考え方です。

コンプレッサーは使い方を間違えると先ほどのように音量が圧縮されたままになってしまうので使い方に注意が必要なエフェクトです。さらにはコンプレッサーは細かい設定として
  • 圧縮を開始する速さ(Attack)
  • 圧縮が持続する長さ(Release)
  • 元音の圧縮比率(Ratio)
  • 圧縮の角度(Knee)
というパラメーターも存在します。使い方が少々難しいエフェクトですので慣れるまではかけすぎないように気をつけて使ってみましょう。
コンプレッサーについての記事をいくつか以前に書いておりますのでより理解を深めたい方は参照してみてください。

2.ダイナミクスを埋める方法:ボリュームオートメーション

ボリュームオートメーションでダイナミクスを埋める方法があります。
ライブイベントでPAがミキサーのフェーダーをライブ中に上げ下げしていることがあります。特にボーカルに対して声を張るであろうタイミングでは上手くフェーダーでボリュームを調整しないとハウリングが発生してしまいます。そのためPAは瞬時に状況を見極めてフェーダーを上下しているのです。
そのフェーダーの上げ下げをDAW上でも再現するということでボーカルにボリュームオートメーションを使います。
オートメーションとは自動化を意味しています。ボリューム調整の自動化というわけです。
先ほどコンプレッサーを使ったダイナミクスの埋め方を紹介しましたが特定の場所で大きな音量が発生している箇所があった場合には急激な大きな圧縮が発生することになり、不自然で音楽的に心地良くない圧縮された音になるケースがあります。
特にボーカルは表現力が必要とされるパートなため、そのような急激で大きな圧縮が発生しやすいパートでもあるのです。ですからコンプレッサーだけに頼ったダイナミクスの埋め方は万能ではないということになります。
そのため、より自然なダイナミクスの埋め方を実現するためにリアルタイムでボリュームの上げ下げを行いダイナミクスを整えてやります。
体感でボリュームが小さい箇所はフェーダーで上げる、ボリュームが大きなと感じた箇所はフェーダーで下げます。この作業を曲の終わりまで行います。
スクリーンショット 2020-12-26 2.33.10
Cubaseの場合はトラックにRとWのボタンがあります。これはオートメーションの操作に使います。
  • オートメーションの読み込みがR、Wは書き込み
コンプレッサーだけでは自然なダイナミクスの埋め方にならないという方はぜひボリュームオートメーションを試してみてください。
私なりのコツですがあまり神経質にボリュームオートメーションを書き込みすぎないことです。
ポイントは耳で気になる箇所のみ調整することです。それが純粋に音楽的な判断を耳で行うということだからです。

WavesからVocal Riderというボリュームオートメーションを自動で処理してくれるプラグインがあります。もし「ボリュームオートメーションが大変だ」という方はこちらもぜひお試しください。
スクリーンショット 2022-07-05 22.29.42
WavesのMV2というコンプレッションでもないダイナミクスの埋め方を行ってくれるプラグインがあります。コンプ臭さをなるべく出さずに綺麗な調整をしたいという場合にはVocal Riderの前段にインサートし、軽くかけてやると自然な音量感になります。 

3.ダイナミクスを埋める方法:手コンプ

さらに仕上げとして手コンプでダイナミクスを埋めるという方法を紹介します。
こちらもコンプレッサーを使わないダイナミクスの埋め方です。先ほどのボリュームオートメーションと似た発想で気になるリージョンを分割し、そのリージョンの音量を個別に調整する方法です。これを手コンプと言います。コンプレッサーを自動とすれば、この方法は手動でコンプレッションするということです。
01
Cubaseの場合はハサミツールでリージョンを分割してリージョンのボリュームを調整します。
25
この場合に分割した切り目で「プチッ」とノイズが入る場合があります。このノイズが発生した場合にはクロスフェードを入れる、もしくは切り目の場所を変えて対処します。
この方法もプロが頻繁に使用するぐらいダイナミクスの調整において大切なテクニックです。
先ほども述べていますがコンプレッサーのみに頼ったダイナミクスの調整は万能ではないため、より自然な調整を行うためにボリュームオートメーションと手コンプは必須のテクニックです。

ダイナミクスの調整でコンプレッサーを過信しすぎない

記事中に何度も述べていることですがすごく大事なことなので改めて述べようと思います。ボーカルのダイナミクスの調整がうまくなりたければ大事なことがあります。それは
  • コンプレッサーを過信しすぎないことを肝に銘じる
ことです。私はこのことからコンプレッサーはダイナミクスの調整において音楽的に万能ではないと考えており、あくまでもコンプレッサーはボリュームオートメーションや手コンプがあった上での補助的なモノとして使用しております。
例えば「コンプレッサー一発だけでダイナミクスの調整を終わらせたい!」と考えてレシオをきつめにしたり、スレッショルドを深めに設定した結果
ああああ
極端な場合にはこのように圧縮しすぎてしまい、原音が破綻してしまいます。結果的にコンプレッサーを外した方が音質が良いということになりかねません。このようにコンプレッサーは使い方を間違えると音質を悪くさせてしまうこともあるのです。
そのため上手なダイナミクスの調整はコンプレッサーだけに頼るだけでは難しいと私は考えております。

おわりに

いかがでしたか?歌ってみたのMIXではダイナミクスの調整は必須です。今回紹介した3つの方法は私も実践している方法です。ポイントはコンプレッサーを過信しないことです。
ボーカルのダイナミクスの調整は音楽的に心地良いことが最前程とされる作業になるため、視覚的な判断だけで上手くいくものではありません。そのためボリュームオートメーション、手コンプで音楽的な判断を持って調整することが大切です。というわけで今日はこの辺で!ではまた